公開日:2008/10/15
【第100号】メルマガ100回記念 空想科学小説
――201X年、人類はIT産業のBシステムズ社に独占され政治、経済はすべてBシステムズ社のいいなりになっていた。かつてBシステムズの敵対会社であったIT企業はBシステムズ社の圧倒的な価格と政治力の下には無意味だった。
岡田 愛人(おかだ あいと、34歳V6の岡田くん似)はBシステムズ社のしがないエンジニアである。創業者でもあり社長の西本がケチなため社員は薄給で我慢していた。嫌で辞めようものなら社長が政府に手を回し家族もろとも社会から抹殺されてしまう、そんな恐怖が社員たちを薄給でも我慢させていた。
しかし岡田には誰にも言えない秘密があった。その昔大学時代の教授の実験を手伝った際に突然コンピュータから電撃が走り気を失ってしまった。気がついた時には愛人は病院のベッドの上に寝かされていた。それ以来体に変化を感じていた。最初はその変化がわからなかったのだが、ある日頭の中で自分以外の別の声が聞こえ始めた。『多重人格』。そう思った岡田は誰にもその事は言えなかったのだ。
某日Bシステム社内。
「おい岡田、東亜興業大学の松山教授からクレームついたって西本社長が呼んでるぞ」
「ああ、あのスワロープロジェクトかあ。何だろうなあ。うまく完成させた筈だけど」
Bシステムズ社長室。
「おい岡田あ!てめえ、何しやがったあ。このプロジェクト検収できなかったら利益減るだろうがあ。俺のこずかい減らす気かあ?」
「しゃ社長!何があったのでしょうか?」
「どうもこうもねえ。世界最高速のスワローシステムの性能がでねえんだよ。松山教授がかんかんになって俺に電話してきて2時間も小言聞いてたんだぞう。ハードウェアは特におかしくないから、お前のチューニングがおかしいんだろうってよ。まあ俺が麻山首相に電話して何とか時間をとらせるように指示したからこの間に直してこい!できなきゃ、おまえはくび!家族もろとも抹殺!」
同社内。
仲間由紀恵似の中村ひろこ(24歳)が岡田に近寄ってくる。
「岡田君、大丈夫?社長に何言われたの?今日のデート6時忘れないでね」
中村はBシステムズ社で営業をしていた。岡田と付き合ってもう2年になる。
「うん、でもこれから東亜工業大学にいかないといけないんだあ」
「ええ、また仕事~。この前も山荘工業の関目さんに突然呼ばれてドタキャンになったばっかりよ」
関目さんは山荘工業に勤める岡田の大学の先輩。この前は山荘工業の得意先の佃煮大学の四塩教授が米国のアララ社から購入したマシンのLINPACKの性能測定で、急に呼び出しをくらって助っ人にいったのだった。おかげで佃煮大学は上位にランクされた。
「ひろこ。今日は大丈夫だと思うよ。原因はわかっているからね。じゃあ6時にいつものところでね」
東亜工業大学に向かう西縦線の中で岡田は悩んでいた。
(だいたい社長が利益増やすためにコア数を減らして納品したのが間違いなんだようなあ。客からは俺が開発した仮想コアソフトウェアでわからないようにしてあるけど、性能が落ちるのは当たり前なんだよねえ。性能が落ちる分をアクセラレータと大東京電力のデータセンターにハックして一部計算パワーを盗むようにしたのは俺のおかげだと思うんだけどねえ。でもLINPACKやられちゃうとばれちゃうわなあ・・・どうしよう)
東亜工業大学、松山教授室。
「岡田君、君が大丈夫って言ったのは嘘だったのかね。私が西本社長と友人でなければとっくにメーカーを変えているところだよ。今日中に世界最高性能を出してもらいたいもんだね」
「松山教授。わかりました、全力をつくします」
東亜工業大学、計算機室。
体育館ほどもある計算機室に所狭しと並んだシステムが見える。この計算機のために東亜工業大学は原子力発電所まで建設していた。また計算機の発熱する熱を利用してとなりには温水プール設備まである。プールは計算機室からガラス越しに見ることができた。
「ああ、いいなあ。楽しそうだなあ。俺もこの仕事が終わったらひろことバリにでも行こう」
可愛いビキニ姿の女子大生達がビーチボールをやっていた。
「それじゃあ、まずはログインするか」
岡田はメインコンソールとなるゴーグルをかぶり、特権ユーザでログインした。静かなうねりをあげながらシステムが起動を始める。画面はBシステムズ社が開発したモーションディテクト付3Dグラフィック画面になった。ここからはキーボードを打つ必要はない。見た視線の先がポインタとなり手足のモーションで全ての操作が可能だ。傍目から見るとダンスをしているように見えてしまう。
「まずはシステムログを見てみるか」
おもむろに視線を左上に上げ、手を十字に切ると新たな画面が現れた。岡田は「システムログ」と呼ぶと、その画面にログが表示された。そのシステムログを右手と左手で2分割し内容のチェックを始めた。
「あれ?デバイスモジュールで何かエラーが出てるなあ」と岡田はそのエラーメッセージをさらに深く追ってみると、メッセージは1354番目のスイッチのポートでエラーが発生していることを示していた。
「よし、スイッチのレイヤーに降りてみよう」
岡田が「スイッチ番号1354ズーム」と叫ぶとメインコンソールに新たなウィンドウが現れ、それはスイッチを仮想化したウィンドウだった。ポートの状態を見ていくとポート36番が赤に変わっている。
「何?ハードエラーかよ?」
岡田がポート36番にズームをかけた時にそれは起こった。画面全体が突然真っ白に変わり、その奥に何かが動いている。
「こっ、こっこれはどういうことだ!」
その動く物体は徐々に巨大になり最後には何ともい言えない怪物に変わったのだ。岡田はあまりの驚きにその場から逃げようとしたのだが、装着しているモーションデテクトシステムが体をロックして動きが取れない。すると突然コンソールのスピーカーから声がした。
「ふっふっふっふっ・・・私は第789番銀河から来たレクサス星人、認識番号SC430だ。この地球は美しいが温暖化で地球の寿命が縮んでいる。こんな巨大な計算機を何個も作って二酸化炭素を増やしているからだ。だから俺は計算機をぶっつぶす!」
岡田は冷静になるように自分に言い聞かせた。
「何を勝手なことを。この計算機は原子力発電だから関係ないだろう。さらに地球は俺達のものだ。地球をどうしようってお前には関係ないだろう」
岡田は自分でも身勝手な言い分だと思いながら話かけた。スピーカーからさらに大きなガガガガというノイズが響いてきた。
「うるさい!俺たちは地球を植民地化するのだ。地球人は邪魔だ。まずはお前から片付けてやる」
岡田が装着しているモーション装置がきしみをあげながら体を締めてくる。
「ううううう」
苦しむ岡田。
(ああ、俺もこれで終わりかあ。ああ一度も結婚しなかったなあ。ひろみは泣いてくれるかなあ。そうだ、部屋のエロ本捨てとけばよかった)
遠のく意識に中で阿保なことを考えていた、その時に頭の中で別の声がした。
<愛人!愛人!>
「何だ!声が聞こえる。お迎えの声かあ・・」
<愛人、馬鹿なことを考えるな。お前には隠された能力がある。今こそそれを使う時だ>
「え!?隠された能力?」
<そうだ。お前が大学の時に実験で気を失った時、我らがM24星から助けに来たのだ。だからお前はまだ生きている>
「え!そうだったのか!たまに他の声が聞こえておかしいとは思っていたが精神病ではなかったんだね。ああ、良かったこれで安らかに死ねる。」
<馬鹿!お前はまだ死なぬ。我らの能力を使って闘うのだ>
「でもどうやって?」
<お前の体に変身のためのスイッチを付けておいた。それはお前の舌に埋め込んである>
岡田は口の中で舌を上下左右に動かしてみた。すると自分の舌の下にもうひとつの小さい舌の形をした突起があることがわかった。
<そうだ。それがスイッチだ。それを押すのだ。ただお前のMTBFは3分間だ>
舌でもうひとつの舌を押すなんてどうやっていいかわからなかったしMTBFの意味もわからなったが、その時岡田思った。「え!?俺って2枚舌?」そんなことを考えながら思いっきり舌の突起を押した。
閃く閃光、そしてそこに銀色のスーツをまとった岡田が出現した。
<愛人。それがクラスタマンだ。後は本能のまま戦え。お前の脳にはすでにファームウェアで戦い方が組み込んである>
岡田は「それってベースはLinuxですかねえ?」とさらに疑問がわいたが、そんなことを聞く余裕はない。
「おおおお!お前はクラスタマン!地球にもいたのか。この前はBSC星で負けたが今度はそいう訳にはいかないぞ!」
レクサス星人がファンを使った熱風攻撃をかけてきた。「わーーー!」とのけぞるクラスタマン。
「うん!?でも熱くないぞ」
「レクサス星人、今の技術進歩を忘れているな。今は低消費電力だから熱くないんだ。次はこちらだ!」
「LIMEPACK100攻撃~!」
――説明しよう。
LIMEPACK攻撃はクラスタマンが持っている8,388,608のコアキャラを利用して精神観念を電気信号化しレーザービームにする攻撃だ。行列数が多ければ多いほど威力がある。でもレクサス星人は何ともないようだ。
「ふふふふ。クラスタマン。20年前の攻撃なんて意味がないのだよ。それではこちらだ」
次にレクサス星人が繰り出したのはMPYピンポン攻撃。高速にノードを移動するエネルギー体が四方八方からクラスタマンを攻撃する。
「わああああ」
吹っ飛ぶクラスタマン。クラスタマンは傷ついた体を起こしながら
「そう来るなら、奥の手を。超並列戦隊クラスターマーーーーン合体」
そう、実はクラスタマンはすでに地球に数多く侵入していた。普段は社会の中に溶け込んで生活しているが、一旦仲間に危険が訪れると合体してパワーアップできるのだ。それをコントロールしているのが最近建設された【新東京スカイツリー】。スカイツリーがハブとなり世界のクラスタマンを接続するのだ。合体したクラスタマンは毎秒10億ビットで接続され、エネルギーを集め一挙に攻撃に利用できる。
「それでは行くぞレクサス星人。合体したクラスタマンの威力を見よ!LIMEPACK10000攻撃!」
放ったレーザービームはレクサス星人を横切った。何度も攻撃するがいつもそれてしまう。
「クラスタマン。そんなものかお前の攻撃は」
「何だとう!どうして当たらないんだ」
「そうか。MPYCHで攻撃を立ち上げている最中に相手が動いてしまうんだ。もっと起動を早くしなくては。よし!それならこれを受けてみよ!」
クラスタマンは本能で攻撃の進化を始めていた。
「LIMEPACK10000攻撃!RAMアタ~ック!」
真っ赤なレーザー光線がレクサス星人に命中した。よろめくレクサク星人。
「とどめだ!LIMEPACK1000000000攻撃!RAMアタ~ック!ダブル!」
2本のピンクのレーザー光線が二重螺旋を組みながらレクサス星人に刺さる!そして爆発。
「うおおおおおおお~!今回は負けたが次回は必ずお前を殺すからな」
レクサス星人は突然消えてしまった。
東亜工業大学計算機室。床に倒れている岡田。
「ううう・・・何が起こったんだ。ああ早くシステム直さなくちゃ」
メインコンソールはすでに正常な状態に戻っていた。
「よし早いとこ性能評価試験して帰ろうっと」
岡田が性能評価プログラムを実行すると、ものの数分で結果が出力された。それは人類が初めてみるエクサフロップスの値を示していた。
「げげ~!こんな結果でちゃったよ~。でもこれで松山教授もお喜びだな」
この様子を遠くで見ているいくつもの目があった。
「ボス、これでいいんですね」
「そうだ。裏で俺達、超並列戦隊クラスタマンが計算をしていたなんてあいつも気づかないだろう。奴にはこれからも地球のために戦ってもらわねばならん。ここで奴の評価を落とすわけにはいかんのだ」
都内某所。ひろみを待つ岡田。時計はすでに6時30分をさしていた。「ピロロロ」とメールの着信音。岡田は携帯のメールを読んだ。ひろみからだった。
「ごめん。佃煮大学の大助(おおすけ)先生と東亜工業大学の春山先生が飲みに行こうって言うからちょっと今日はキャンセル」
「あああ!ひろみの野郎、この前の仕返しかよ~。でも、ま!いいか」
岡田は一人、ネオン街の中に消えていった。
ここは夜の蝶が舞う「株樹町」・・・・
岡田 愛人(おかだ あいと、34歳V6の岡田くん似)はBシステムズ社のしがないエンジニアである。創業者でもあり社長の西本がケチなため社員は薄給で我慢していた。嫌で辞めようものなら社長が政府に手を回し家族もろとも社会から抹殺されてしまう、そんな恐怖が社員たちを薄給でも我慢させていた。
しかし岡田には誰にも言えない秘密があった。その昔大学時代の教授の実験を手伝った際に突然コンピュータから電撃が走り気を失ってしまった。気がついた時には愛人は病院のベッドの上に寝かされていた。それ以来体に変化を感じていた。最初はその変化がわからなかったのだが、ある日頭の中で自分以外の別の声が聞こえ始めた。『多重人格』。そう思った岡田は誰にもその事は言えなかったのだ。
某日Bシステム社内。
「おい岡田、東亜興業大学の松山教授からクレームついたって西本社長が呼んでるぞ」
「ああ、あのスワロープロジェクトかあ。何だろうなあ。うまく完成させた筈だけど」
Bシステムズ社長室。
「おい岡田あ!てめえ、何しやがったあ。このプロジェクト検収できなかったら利益減るだろうがあ。俺のこずかい減らす気かあ?」
「しゃ社長!何があったのでしょうか?」
「どうもこうもねえ。世界最高速のスワローシステムの性能がでねえんだよ。松山教授がかんかんになって俺に電話してきて2時間も小言聞いてたんだぞう。ハードウェアは特におかしくないから、お前のチューニングがおかしいんだろうってよ。まあ俺が麻山首相に電話して何とか時間をとらせるように指示したからこの間に直してこい!できなきゃ、おまえはくび!家族もろとも抹殺!」
同社内。
仲間由紀恵似の中村ひろこ(24歳)が岡田に近寄ってくる。
「岡田君、大丈夫?社長に何言われたの?今日のデート6時忘れないでね」
中村はBシステムズ社で営業をしていた。岡田と付き合ってもう2年になる。
「うん、でもこれから東亜工業大学にいかないといけないんだあ」
「ええ、また仕事~。この前も山荘工業の関目さんに突然呼ばれてドタキャンになったばっかりよ」
関目さんは山荘工業に勤める岡田の大学の先輩。この前は山荘工業の得意先の佃煮大学の四塩教授が米国のアララ社から購入したマシンのLINPACKの性能測定で、急に呼び出しをくらって助っ人にいったのだった。おかげで佃煮大学は上位にランクされた。
「ひろこ。今日は大丈夫だと思うよ。原因はわかっているからね。じゃあ6時にいつものところでね」
東亜工業大学に向かう西縦線の中で岡田は悩んでいた。
(だいたい社長が利益増やすためにコア数を減らして納品したのが間違いなんだようなあ。客からは俺が開発した仮想コアソフトウェアでわからないようにしてあるけど、性能が落ちるのは当たり前なんだよねえ。性能が落ちる分をアクセラレータと大東京電力のデータセンターにハックして一部計算パワーを盗むようにしたのは俺のおかげだと思うんだけどねえ。でもLINPACKやられちゃうとばれちゃうわなあ・・・どうしよう)
東亜工業大学、松山教授室。
「岡田君、君が大丈夫って言ったのは嘘だったのかね。私が西本社長と友人でなければとっくにメーカーを変えているところだよ。今日中に世界最高性能を出してもらいたいもんだね」
「松山教授。わかりました、全力をつくします」
東亜工業大学、計算機室。
体育館ほどもある計算機室に所狭しと並んだシステムが見える。この計算機のために東亜工業大学は原子力発電所まで建設していた。また計算機の発熱する熱を利用してとなりには温水プール設備まである。プールは計算機室からガラス越しに見ることができた。
「ああ、いいなあ。楽しそうだなあ。俺もこの仕事が終わったらひろことバリにでも行こう」
可愛いビキニ姿の女子大生達がビーチボールをやっていた。
「それじゃあ、まずはログインするか」
岡田はメインコンソールとなるゴーグルをかぶり、特権ユーザでログインした。静かなうねりをあげながらシステムが起動を始める。画面はBシステムズ社が開発したモーションディテクト付3Dグラフィック画面になった。ここからはキーボードを打つ必要はない。見た視線の先がポインタとなり手足のモーションで全ての操作が可能だ。傍目から見るとダンスをしているように見えてしまう。
「まずはシステムログを見てみるか」
おもむろに視線を左上に上げ、手を十字に切ると新たな画面が現れた。岡田は「システムログ」と呼ぶと、その画面にログが表示された。そのシステムログを右手と左手で2分割し内容のチェックを始めた。
「あれ?デバイスモジュールで何かエラーが出てるなあ」と岡田はそのエラーメッセージをさらに深く追ってみると、メッセージは1354番目のスイッチのポートでエラーが発生していることを示していた。
「よし、スイッチのレイヤーに降りてみよう」
岡田が「スイッチ番号1354ズーム」と叫ぶとメインコンソールに新たなウィンドウが現れ、それはスイッチを仮想化したウィンドウだった。ポートの状態を見ていくとポート36番が赤に変わっている。
「何?ハードエラーかよ?」
岡田がポート36番にズームをかけた時にそれは起こった。画面全体が突然真っ白に変わり、その奥に何かが動いている。
「こっ、こっこれはどういうことだ!」
その動く物体は徐々に巨大になり最後には何ともい言えない怪物に変わったのだ。岡田はあまりの驚きにその場から逃げようとしたのだが、装着しているモーションデテクトシステムが体をロックして動きが取れない。すると突然コンソールのスピーカーから声がした。
「ふっふっふっふっ・・・私は第789番銀河から来たレクサス星人、認識番号SC430だ。この地球は美しいが温暖化で地球の寿命が縮んでいる。こんな巨大な計算機を何個も作って二酸化炭素を増やしているからだ。だから俺は計算機をぶっつぶす!」
岡田は冷静になるように自分に言い聞かせた。
「何を勝手なことを。この計算機は原子力発電だから関係ないだろう。さらに地球は俺達のものだ。地球をどうしようってお前には関係ないだろう」
岡田は自分でも身勝手な言い分だと思いながら話かけた。スピーカーからさらに大きなガガガガというノイズが響いてきた。
「うるさい!俺たちは地球を植民地化するのだ。地球人は邪魔だ。まずはお前から片付けてやる」
岡田が装着しているモーション装置がきしみをあげながら体を締めてくる。
「ううううう」
苦しむ岡田。
(ああ、俺もこれで終わりかあ。ああ一度も結婚しなかったなあ。ひろみは泣いてくれるかなあ。そうだ、部屋のエロ本捨てとけばよかった)
遠のく意識に中で阿保なことを考えていた、その時に頭の中で別の声がした。
<愛人!愛人!>
「何だ!声が聞こえる。お迎えの声かあ・・」
<愛人、馬鹿なことを考えるな。お前には隠された能力がある。今こそそれを使う時だ>
「え!?隠された能力?」
<そうだ。お前が大学の時に実験で気を失った時、我らがM24星から助けに来たのだ。だからお前はまだ生きている>
「え!そうだったのか!たまに他の声が聞こえておかしいとは思っていたが精神病ではなかったんだね。ああ、良かったこれで安らかに死ねる。」
<馬鹿!お前はまだ死なぬ。我らの能力を使って闘うのだ>
「でもどうやって?」
<お前の体に変身のためのスイッチを付けておいた。それはお前の舌に埋め込んである>
岡田は口の中で舌を上下左右に動かしてみた。すると自分の舌の下にもうひとつの小さい舌の形をした突起があることがわかった。
<そうだ。それがスイッチだ。それを押すのだ。ただお前のMTBFは3分間だ>
舌でもうひとつの舌を押すなんてどうやっていいかわからなかったしMTBFの意味もわからなったが、その時岡田思った。「え!?俺って2枚舌?」そんなことを考えながら思いっきり舌の突起を押した。
閃く閃光、そしてそこに銀色のスーツをまとった岡田が出現した。
<愛人。それがクラスタマンだ。後は本能のまま戦え。お前の脳にはすでにファームウェアで戦い方が組み込んである>
岡田は「それってベースはLinuxですかねえ?」とさらに疑問がわいたが、そんなことを聞く余裕はない。
「おおおお!お前はクラスタマン!地球にもいたのか。この前はBSC星で負けたが今度はそいう訳にはいかないぞ!」
レクサス星人がファンを使った熱風攻撃をかけてきた。「わーーー!」とのけぞるクラスタマン。
「うん!?でも熱くないぞ」
「レクサス星人、今の技術進歩を忘れているな。今は低消費電力だから熱くないんだ。次はこちらだ!」
「LIMEPACK100攻撃~!」
――説明しよう。
LIMEPACK攻撃はクラスタマンが持っている8,388,608のコアキャラを利用して精神観念を電気信号化しレーザービームにする攻撃だ。行列数が多ければ多いほど威力がある。でもレクサス星人は何ともないようだ。
「ふふふふ。クラスタマン。20年前の攻撃なんて意味がないのだよ。それではこちらだ」
次にレクサス星人が繰り出したのはMPYピンポン攻撃。高速にノードを移動するエネルギー体が四方八方からクラスタマンを攻撃する。
「わああああ」
吹っ飛ぶクラスタマン。クラスタマンは傷ついた体を起こしながら
「そう来るなら、奥の手を。超並列戦隊クラスターマーーーーン合体」
そう、実はクラスタマンはすでに地球に数多く侵入していた。普段は社会の中に溶け込んで生活しているが、一旦仲間に危険が訪れると合体してパワーアップできるのだ。それをコントロールしているのが最近建設された【新東京スカイツリー】。スカイツリーがハブとなり世界のクラスタマンを接続するのだ。合体したクラスタマンは毎秒10億ビットで接続され、エネルギーを集め一挙に攻撃に利用できる。
「それでは行くぞレクサス星人。合体したクラスタマンの威力を見よ!LIMEPACK10000攻撃!」
放ったレーザービームはレクサス星人を横切った。何度も攻撃するがいつもそれてしまう。
「クラスタマン。そんなものかお前の攻撃は」
「何だとう!どうして当たらないんだ」
「そうか。MPYCHで攻撃を立ち上げている最中に相手が動いてしまうんだ。もっと起動を早くしなくては。よし!それならこれを受けてみよ!」
クラスタマンは本能で攻撃の進化を始めていた。
「LIMEPACK10000攻撃!RAMアタ~ック!」
真っ赤なレーザー光線がレクサス星人に命中した。よろめくレクサク星人。
「とどめだ!LIMEPACK1000000000攻撃!RAMアタ~ック!ダブル!」
2本のピンクのレーザー光線が二重螺旋を組みながらレクサス星人に刺さる!そして爆発。
「うおおおおおおお~!今回は負けたが次回は必ずお前を殺すからな」
レクサス星人は突然消えてしまった。
東亜工業大学計算機室。床に倒れている岡田。
「ううう・・・何が起こったんだ。ああ早くシステム直さなくちゃ」
メインコンソールはすでに正常な状態に戻っていた。
「よし早いとこ性能評価試験して帰ろうっと」
岡田が性能評価プログラムを実行すると、ものの数分で結果が出力された。それは人類が初めてみるエクサフロップスの値を示していた。
「げげ~!こんな結果でちゃったよ~。でもこれで松山教授もお喜びだな」
この様子を遠くで見ているいくつもの目があった。
「ボス、これでいいんですね」
「そうだ。裏で俺達、超並列戦隊クラスタマンが計算をしていたなんてあいつも気づかないだろう。奴にはこれからも地球のために戦ってもらわねばならん。ここで奴の評価を落とすわけにはいかんのだ」
都内某所。ひろみを待つ岡田。時計はすでに6時30分をさしていた。「ピロロロ」とメールの着信音。岡田は携帯のメールを読んだ。ひろみからだった。
「ごめん。佃煮大学の大助(おおすけ)先生と東亜工業大学の春山先生が飲みに行こうって言うからちょっと今日はキャンセル」
「あああ!ひろみの野郎、この前の仕返しかよ~。でも、ま!いいか」
岡田は一人、ネオン街の中に消えていった。
ここは夜の蝶が舞う「株樹町」・・・・
つづく。
これはフィクションであり、実在の人物と名称とは全く関係ありません
これはフィクションであり、実在の人物と名称とは全く関係ありません
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